人気ブログランキング | 話題のタグを見る

シティ・オブ・ゴッド

本当はいっぺんに2作品を紹介するつもりだったのですが、
長くなってしまったので、1つづつ紹介することにします。

今回、紹介するのは「シティ・オブ・ゴッド」
(例によってご覧になってない方は、見ないほうがいいかもしれません)
シティ・オブ・ゴッド_f0154325_0133389.jpg

この作品はドキュメンタリータッチで描かれているものの、
芯の部分は、作者の主張が色濃く反映されている、いわゆるフィクションです。

ドキュメンタリー的にも秀逸で、
なおかつ主張を反映した部分が、
ドラマチックに鮮やかに描かれているため、まさに神を思わせる完璧感がある。

しかし、その主張が問題である。

シティ・オブ・ゴッド_f0154325_0151169.jpg
この作品のキーパーソンになる主要人物は3人。
リトル・ゼ、2枚目マネ、そして話し手である主人公である。
この3人に関しては、作者の意向に沿ったフィクション的に描かれ、
その他の出来事に関しては、ドキュメンタリー的に描かれている作品と言えます。

この3人それぞれの役割を、
私の好きな映画「トロイ」に当てはめてみると、
リトル・ゼ=アキレス
2枚目マネ=ヘクトル
主人公=パリス

シティ・オブ・ゴッド_f0154325_0575251.jpg
といった事になるでしょう。
(もちろん、全く同じではないが)

まず、主人公=パリスの生き方は、
言ってみれば、人間として〝賢明〟な生き方である。
しかし、臆病者であることは否定できない。

次に2枚目マネ=ヘクトル。
彼らの生き方はいわゆる〝正義〟である。
しかし、作者は彼をある種、目の敵にしている。
シティ・オブ・ゴッド_f0154325_0144433.jpg
私は、単純にこのグループに属するので、
この描き方に憎しみすら覚える。

最後にリトル・ゼの描き方。
リトル・ゼは主人公とは対極に位置する〝豪胆〟なキャラクターである。
にもかかわらず、作中では否定的な主張は感じられないし、
他のキャラに比べてかくべつ悲惨な末路でもない。

作中彼は、殆ど中心人物と言え、彼なくして、作品がありえなくなっている。
しかし、こういう描き方では、
(主人公を除けば)人を殺せば殺すほど、最後まで生き残る…と言うことになってしまうでしょう。

シティ・オブ・ゴッド_f0154325_016524.jpg
まして、同じ様な者の手によって、最後を迎える…となると、
そういった生き方を完全肯定する事になってしまう。

主人公の次にもてはやされたキャラと言える。

なぜ、こんな矛盾をはらむ事になってしまうのかと言うと、
作者(主人公)は、リトル・ゼを、否定も肯定もしないと言うよりも、
黙殺し文字通り〝傍観している〟からに他ならない。

だから、リトル・ゼを等身大で描けないでいるのだ。
主人公にとって、あまりに遠い存在で、
シティ・オブ・ゴッド_f0154325_0455432.jpg
関わりあいたくないのだ。

だが、力でこういう地位に付く人間はおそらくここまで残忍な人間ではないだろう。
ただ、実力でなく銃によって手に入れた地位なので、
アキレスより、遥かに卑劣な人間であることはいえると思う。

このように、あまりに力を避けているため、
2枚目マネを否定するという、曲がった考えになってしまうのだと思われる。

この作品は、賢明なやりようを描いてはいるが、
勇敢でない〝ヘタレ〟作品である。
しかし、1作品として才能にあふれ秀逸であり、そうい意味では素晴らしい作品でもある。
なにより矛盾を孕んでるとはいえ、平和を訴えている事は評価できる点だ。

  by s_h_i_g_e_y_a_n | 2008-09-25 23:58 | その他の傑作

<< ティア-ズ・オブ・ザ・サン いさぎよい >>

SEM SKIN - DESIGN by SEM EXE