ベン・ハー&グラディエーター

今日ご紹介いたしますのは、超有名なアカデミー賞2作品。

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「ベン・ハー」と「グラディエーター」
(ベン・ハーは他にも映画化されているが、無論、一番有名な1959年作のものです)

これまでも、私は幾度となく、
2つの作品を比較検討するという試みをしてきた訳ですが、
それは全て、あくまで〝作品や制作に関すること〟でした。

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今回は、それ以外のことに注目したいと思います。
(今回もネタバレ含みますので観てない方は、ご覧になってからの方がいいかもしれません)

どちらも私の好きな作品で、両作共に素晴らしい出来映えなので、
特にそれ程ケチつける場所がないがゆえに、こういう検証にはうってつけな訳です。

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この二つは非常に似通ったストーリー展開で、
理不尽な糾弾で、追い落され、
かたやガレー船の奴隷を経て戦車レース騎手として、かたや奴隷剣闘士として、
不屈の魂で生き延び、のし上がり、
宿敵に復讐を果たすという話です。

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もっとも後発であるグラディエーターは、
そういった事も意図して、作られたのかもしれませんが…
つまり、わかってて敢えてベン・ハーをマネてると言う事です。
しかし何にせよ、そういった事はそれ程重要なことではない。
仮にパクってるとしても、
結果として、随分違う作品に仕上がっている事は明白だし…

冒頭でも述べたが、今日私が言いたいのはそんなことではない。

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注目するのは、ストーリーが似通っていて、加えて制作にかけるコンセプトも近いものがあるこの
2作品の相違点を見ることによって、
実はこの二つが制作されたときの〝時代背景〟が透けて見えてくるのです。

まずベン・ハーの方を見ると、
現代の侵略ものの映画と比べて、物理的な残虐シーンや表現が殆ど出てきません。

それに対してグラディエーターは、
残酷な表現が横行する現代(2008年現在)の映画界を先駆けするように、
惨いシーン、残虐な表現が出てきます。

これはグラディエーターの制作者のほうが残虐な人間であることを示しているという訳では、
もちろんない(だとすれば、それは本人のせいではなく時代のせいである)。

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ベン・ハーの頃は、第2次世界大戦の傷がまだ癒え切ってなく、
戦争反対の意識が色濃く残っていたから、そのような作品になったのだと思う。
全体的にも反戦争、反暴力の意識が強く感じられます。
(もっとも、ベン・ハーの方は原作がある作品で、そのせいもあるかもしれないと付け加えておく)

グラディエーターに関しても先に述べたように、
他の最近の映画を見てもらえば分かる通り〝時代〟の流れに従っているに過ぎません。

つまり、ベン・ハーのスタッフがグラディエーターの時代に作ったなら、
グラディエーターのような話になると思うし、
グラディエーターのスタッフがベン・ハーの時代に作ったなら、
やはりベン・ハーのような話になると思う訳である。

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しかし、こう言い切ってしまうと、2作品を完全に同等に扱うことになるので、
異を唱える方もおられるかもしれません。
なぜなら、ベン・ハーは映画史上でも最高の名作のひとつとして君臨しているが、
グラディエーターはアカデミー賞の一作品の枠は出ない。

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しかし、グラディエーターのスタッフも決してベン・ハーのスタッフに劣るものではありません。
これは、突出した功績を残しにくい今の時代を反映していて、
これもまたひとつの〝時代〟の違いを表している事柄と言えるでしょう。

また、ベン・ハーは宗教的な発想がまだ通用する時代で、
超常的な力を描いてる箇所がある。

対するグラディエーターには、物質主義を反映するように、
そういった神秘的な慰めは一切出てこない。

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最終的に結果だけを見ると、
グラディエーターの主人公の一家は全員死に、ベン・ハーの家族は全員無事、
という、極端に違いが生じている。

さて、ここまで長々話してきていえる事は、どちらが正しいかではなく、
双方の制作者は、共に優秀なスタッフで、
その優秀なスタッフは〝時代〟というものを敏感に察知して、
こういう話を作っていると言う事なのだ。

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他の相違点として宿敵の存在設定や続柄も対照的ではあるが、
メッサラも途中から完全に敵に回るし、
さほど重要ではないと言うのが個人的な意見だ。

ちなみにベン・ハーが作られた年は〝ベトナム戦争〟が始まった年だ。
私は、平和を求める中途半端な心が、あの戦争を泥沼化したと考えている。
やるならやる、やらないならやらない。
そう言ったはっきりした態度が、大事なのだろう。
その点でも、この2作品は大変、優れているといえる。

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最近、エンターテイメント界は残虐な表現に歯止めがない。
それは一概に悪いことではないのだが、
残念ながら、人類にとって芳しくない兆候である。
忘れてはならないのは、戦争をするのは皮肉にも優秀な人間であるという事。
実は平和を訴えるのも同じ事で、戦争をせざるをえない人間にとっては、心をえぐる行為だ。

場合によっては、がんばることを否定する必要もある…ということかもしれない。

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次回は、似たような時代物の最高傑作か、あるいは一息入れて日本作か…
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  by s_h_i_g_e_y_a_n | 2008-07-07 08:05 | 大作を違った視点で見る

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